とある知り合いから”千両”切りのお手伝いの話が来ました。
千両は赤い実のついた正月に飾るおめでたい植物です。その千両の収穫?というのか、刈り取りというのか、とにかく千両を切りに来ないかとお誘いを受けまして、農作業に興味津々のそーはふたつ返事で行きます、と。
千両(せんりょう)とは
千両(せんりょう)というのは植物の名前です。
そーは花とか木とか植物のことを色々知ってたらかっこいいなー、と思ってはいるのだけれど、全く詳しくありません。が、この千両は随分前から、正月近くになると商品にならないモノを頂いていたので知っていました。
千両です。こんな実がつくので、万両(まんりょう)とともに縁起物としてお正月に飾られます。
千両は主に赤が作られているのですが、黄色い千両もあります。
やっぱりお正月の縁起物なので、赤のほうが多く好まれるのですが、赤ばっかり見ていると、黄色の千両に特別感を感じてきます。
万両というのは
これです。
千両は葉の上に鮮やかな赤い実がつき、万両は葉の下に深い赤のちょっと大きめの実がつきます。
百両という植物もあります。
十両、一両というのもあるみたいですが、、、、写真がありませぬ。
今回は”千両”の収穫、刈り取りのお手伝いをしに行ってきました。
千両の畑
自生の千両は、一年を通して薄日の当たる場所を好むそうです。なので、千両の畑はこんなのです。
竹簾(たけず)で、千両小屋と呼ばれる一年中薄日の状態を作ります。
入り口はこんな感じです。
なんか砦っぽい感じが男心をくすぐります。
中に入るとこんな感じです。
薄日の中に広がっている千両畑は圧巻です(広角のレンズがないのがとても残念)。
水色の紐は千両を真っ直ぐにするために、一本一本手作業で吊っています。いや、マジでこれ一本一本手作業で吊るって膨大な作業量です。気が遠くなるうえに、この千両を吊る作業をするのは真夏。千両小屋の中は蒸っし蒸しなのだそう。。。
ま、今回、僕は外すほうなので。
こんな感じの千両畑が幾つもあって、一箇所ずつ収穫していくのです。
千両を収穫する
家にあった剪定ばさみを持って行ったんですが、貧弱過ぎるという理由で却下されました。
で、貸してもらった剪定鋏がコレ。
この形の剪定バサミは数百円からあるのだけれど、3000円〜5000円くらいのしっかり鍛えられた剪定ばさみじゃないと使いもんにならない、とベテラン千両収穫人のMさんが教えてくれました。
まずは吊られた紐を外します。
こんな感じになっているので、一本一本引っ張って外して、何本かまとめて束ねておきます。
紐を千両から外すだけも結構時間が掛かる。これを一本一本結んで吊るしたなんて、、、
収穫する千両は、三箇所に実の付いている物。太かろうが細かろうが、てっぺんに実があろうがなかろうが、とにかく三箇所に千両の実がついている枝ををなるべく地面に近いところで切ります。
千両の下のところはこんな感じになっています。
前の年の切った跡がのこっていたり、葉っぱや下草があったり、時には千両同士がねじれていたりして、上の実の付いている千両の茎がどれなのか見定めるのが、始めのうちは時間が掛かりました。
千両の列に潜って、両サイドの千両を切ってはさがり、さがっては切るを繰り返して、切った千両は後で拾いやすいように束にして置いていきます。
ある程度切ったら、千両を運び出します。
乱暴に扱うと、実がどんどん落ちて商品価値がさがってしまうので、優しく拾って畑の外に運び出します。
切り終わった千両畑。
すっかり刈り取られてしまって、さみしー感じになります。仕方ないけど。
運びだした千両は箱にブルーシートを敷いたものに入れていきます。
これが千両を入れる箱です。
丁寧に入れていきます。とにかく千両は動かす度に実が落ちてしまうので、なるべく静かにが鉄則です。
千両畑はあっちこっちに点在しているので、箱に入れた千両をトラックで作業小屋まで運びます。
畑の千両を切って作業小屋まで運ぶのが、今回の僕のお手伝い。毎日朝6時半起きで畑に向かって、一日中畑でかがんだ体勢で千両を切る作業は、なまりきった体には少々こたえました。
僕が千両の収穫をお手伝いしたのは全部で7日。毎日心地よい疲労感で、ビールが美味しかったです。でも、次の日も朝早いので、ありえないくらい早い時間に寝ていました。
千両を整えて、選別する
僕とベテランの千両切りのお二人で切った千両を作業場まで運ぶと今度は、収穫した千両を整えて、等級ごとに選別します。
この作業小屋でその作業は行われます。
こんな感じ。ちょうど写真を撮らせてもらった時は人数がちょっと少なかったんですが、普段は、枝葉を整えて等級ごとに分けるおばあちゃん(右側)が3人と、等級ごとに分けられた千両を最終チェックしながら、数を数えて丸めて(縛って)いく人(左のおじいちゃんがいるところ)が、二人くらいいます。
千両の等級には「特等」「一等」「二等」「三等」「四等」の5段階があります。がここの千両農家さんでは、「三等」までしか商品として出さないそう。
等級分けされた千両は最低2日以上水につけてから出荷されます。
千両は日に弱いので、出荷されるまで水につけて保存される場所も薄暗いです。
千両収穫の作業をしている間は天候も良くて、わりと暖かかったんですが、最終日はちょっと寒く、こんなものが登場。
ルンペンストーブ。
休憩中、ルンペンストーブに薪をくべながら暖をとる。そのストーブの上で沸かしたお湯でカップラーメンを作って食べる。なんかすごくいい感じです。
千両を箱詰め、出荷
千両の収穫が終わってから数日後、水を吸わせている千両を出荷に合わせて箱詰めしていきます。
山積みになった組み立てる前の山積みになったダンボールです。
まず、このダンボールを組んでいきます。
このダンボール、千両を入れるための特別なサイズで、しかも鮮度保持の加工が施されているので、たかがダンボールされどダンボールというお値段がするそうです。
組んだダンボール達。
水に浸けてある千両。
千両を水から上げて、ダンボールに入れていきます。
千両は、20本で一束にしてあります。
特級は一箱に2束(40本)、一級は3束(60本)、2級は4束(80本)、3級は5束(100本)入れます。
本数が少なくても一本一本が立派な特級がやっぱり一番重いです。
ダンボールに詰めたら、紐をかける機械でしっかりとめて集荷を待ちます。
これを倉庫に運んで千両の箱詰めは完了!
この日の千両の箱詰めは200箱超。畑で千両を切るより、楽ちんかと思ってかる~い気持ちで手伝いに行ったら、けっこう地味に大変でした。。。
千両を長持ちさせるには
千両は他の切り花同様、水切り(バケツとかに水を張って、水の中で茎を切ること)して、そのまま水に浸けておいてあげると、シャンとします。
千両はエアコンの効いた室内など温かいところに飾ると、あっという間に実が落ちて、ダメになってしまします。ので、玄関とか、涼しい場所を選んで飾ります。
ちょっと、元気がなくなってきたなーと思ったら、また水切りしてあげると元気になります。
そんなことに気をつけると2月終わりまで、千両を楽しむことができます。
千両の収穫に行ったまとめ
千両はお正月の縁起物として売りに出されるんですけど、葉のギザギザは、なんとなく柊(ヒイラギ)も連想させて、赤と緑のコントラストがクリスマスも全然いけちゃうと個人的には思っています。我が家では頂いた商品にならない千両をクリスマス前から楽しんでいます。
千両の花言葉は「利益」「可憐」「裕福」「富」「財産」「恵まれた才能」「富貴」だそうです。これは大事にしなくちゃいけませんね。
今回、千両農家さんのお手伝いをさせてもらって、改めて農家って大変だなーと身を持って感じました。
大変だなーとも思ったけれど、なんか僕の求めているものはこっちの方にありそうだなーとも思ったり。でも、真夏に蒸っし蒸しの千両小屋で千両を一本一本吊るのは誘われても断ろう。。。とも思ったり。
兎にも角にも、いい経験ができて楽しかった〜!